「はめられた公務員」
3月定例市議会が昨日閉会した。実感としては、やはり長かった。以前、ブログに書いたが、今月はやるべきこと山積だったが、実際には、想定外のことも様々に起きて、結構きつい1ヶ月だった。3月議会で成立した予算や議案、おこなった質問などは、定例議会情報として一両日中にホームページにUPするつもりだ。
昨日は、議会最終日の恒例として、会派の打ち上げがおこなわれた。その席で都出身の副市長と色々と話をしたが、私の一般質問(IT投資のムダ遣い)について、東京都のIT担当管理職当時の実感として、まったくその通りだと話してくれた。ちなみに、この副市長は当時かなりのIT投資に関わるムダを削減したそうだ。たぶん、都のIT投資は八王子市の20~30倍の額だろうから、削減効果もさぞ大きかったことだろう。
さて、表題の中野雅至「はめられた公務員」(光文社)を読んだ。新聞広告でちょっと気になっていたのを議会図書室から借りてきた。気になっていたのは、著者のプロフィール。1964生まれ。同志社大学文学部卒。大和郡山市役所を経て、国家一種行政職試験合格、旧労働省のキャリア官僚に。本省課長補佐やハローワークなど出先機関、新潟県庁へ課長職として出向などを経験。市役所職員、県庁職員、国の出先機関勤務、キャリアとして本省勤務と、市、県、国の公務員を全て経験しているというところに興味を持った。
一気に読んだ。言わんとしているのは、政官業の癒着により膨大な財政赤字を作ってしまった日本国と地方自治体。その真犯人は政治家であり、財界である。これらの責任をすべて官に押しつけて、逃げ切ろうとする政治家。
2007年度から増税路線を進め、その前提として公務員のリストラが進められる。財政赤字の責任をすべて行政にかぶせて、政治家は逃げていく。その時、今までバッシングを受けていた中央官庁からバッシング対象が地方公務員へと向かい、いよいよ生け贄地方公務員の大リストラが始まる。といったシナリオ。公務員はその時になって初めて「はめられた」ことに気付く。
なるほど、国、県、市の各職場での経験からの指摘は確かに、と思わせるものがある。自分も一般市、政令市での自治体現場や県庁や国の役人との交流(行政系大学院)の経験から頷く点は多かった。
著者の見立てによる、これから数年間に自治体と中央省庁を襲うであろう大きな波。これを避ける、いや乗り切るためには、次のことが必要だと主張する。国と地方の関係-この国の形を明確にすること。地域間の競争が機能する環境を整備すること。その上で、受益と負担の関係を目に見える形にし、住民に納税者意識をもってもらう。成果主義を機能させるよう導入する。積極的な広報戦略を採る。
要は、今の自治制度は、国と地方の役割分担が相互依存的で、地方はなんでも国の責任にして責任逃れができる。頑張っている自治体と、国のせいにして、努力せず全国均一政策の美味しい処を享受するだけの怠惰な自治体で差が付かず、モラルハザードが起きている。それは、地方公務員個人のレベルでも起きている。だから、もっと頑張った自治体、がんばった地方公務員が報われるようにしなければならない。そのための足かせをはずすべきだ。こんな感じだろう。
概ね同意。そうすると、これからの数年というのは、自治体に於いて、更に改革の速度を上げ、その上で創意工夫による果実を住民に示さねばならなくなるということだろう。
確かに、今の市に様々な権限がおりてきたら、地方公務員、地方政治家が、ルールに基づいた毅然とした決定ができるのか、という感じはする。自治体の規模による職員の能力差については実感として著者の言うとおりだと思う。
面白いのは、華麗な経歴と野心だけはある二枚目若手 イケメン政治家が「すべては公務員の責任だ!」と叫んで、最終段階の大リストラへの口火が切られると言う点。著者は永田氏みたいな代議士に相当ひどい目にあったのだろう、などと想像してしまうが、たぶん、身近に政治家を見ている中で感じた、薄っぺらなポピュリズムと野心が我慢ならないのだろう。
自分としてもこれから、やっていかなければならないイメージは浮かんできている。どんな時代に生きて、何をなすべきか?
次は、梅田望夫の「ウエブ進化論」でWeb.2.0のことなどを早く読みたい。
講評 ☆ 3つ
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