コムスン、落ち武者風情の会長に介護の現状を見た
訪問介護最大手のコムスン。虚偽申請による事業所指定不正取得を理由に、厚労省が指定打ち切り方針を明らかに。その後、同社が、指定打ち切り逃れともとれる子会社への事業譲渡を発表。世論の動向に厚労省の対応は揺れに揺れた。
なかなか姿を見せなかったグットウイルグループ折口会長が記者会見をしたのは厚労省発表から数日後。最近の報道では、介護関連事業すべてから撤退し、全事業を他社へ譲渡する方向のようだ。
24時間訪問介護を売りに全国展開をしてきたコムスンは、業界最大手。利用者は6万5千人とも言われる。利用者はもとより介護業界全体に大きな影響が及ぶ。
連日、この事件を見ていて思うのは、介護業界全体の縮図ではなかろうかということ。これまで他事業者の介護報酬不正請求報道もされてきた。コムスンだけでなく N など大手から地域で活動する零細事業者まで多かれ少なかれ、こうしたことがあるのではないかと疑ってしまう。
一罰百戒でヒヤッとしたところも多いのではないか。福祉マインドをもって取り組んでいる事業所もあるのだろうが、見回すと、怪しげな福祉屋さんがピンストライプのスーツに脂ぎった顔で闊歩していたりする。
2000年、介護保険スタート時に危惧されたのは、サービスが十分に存在するか?「保険あってサービス無し」とならないかということであった。
介護保険は介護を社会化し、官は保険制度を運営、サービス提供は民間事業者が実施するというもの。このため、特別養護老人ホームなどの施設、デイサービス、家事援助の3本柱に早急かつ大量にサービス事業者が誕生することが求められた。このように介護保険のスキームでは、民の市場参入によるサービス量の確保が第一。だから玉石混淆であっても、官サイドからしても事業者は大切な存在であったのだ。
しかし、この7年間で介護を巡る環境は大きく変わった。介護サービスは増加し、介護サービスを受けることは一般化し、利用者意識は大きく変化した。制度草創期から発展期、成熟期へ向かうプロセスを想定するならば、今の時期に対応したサービスの在り方が検討されるべきだ。すなわち、量を重視する政策から、質を問う、利用者本位の介護サービスの在り方が今問われている。
こうした意味で、今回の件をキッカケに、利用者 = 我々 が事業者を判断する際の情報提供と事業者(及び提供するサービス)をしっかりとチエックする仕組みと取り組みが求められる。
例えば、以前、議会でも指摘したが、市民がまず相談に行く窓口=地域包括支援センター。市が大手事業所に委託しているが、そこのケアマネージャーの本籍はその事業所。だから、穿った見方をすれば、川上で相談者を受け入れ、これを川下の自らの事業所につなぐ、こうしたことが税で行われている、とも言える。
それぞれの事業所が(地域包括支援センターとして)果たしている役割は評価する。しかし制度創設から時を経て、介護環境の成熟度に応じて、公正な競争とより良いサービスが提供されるような環境作りに努めるのが行政の役割だろう。
高齢化が一挙に進行する日本。グッドウィル折口会長の落ち武者のような姿を見ながら介護の将来を思った。
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