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2018年3月13日 (火)

森友決裁文書書き換え問題の本質は政官関係にあり

今、東京都議会は予算委員会が開催されていますが、国では森友問題を巡って参院の予算特別委員会が空転しています。

 

「森友問題」というと「まだ、この問題やっていたの⁉」、「いいかげん、外交や経済など他にもっと重要な案件があるんじゃないの」などというふうに感じている方も多いかもしれません(私もそのように感じていました)。

 

しかし、今回、財務省が決裁文書の「書き換え」を認めたことで、この問題は民主主義の根幹を揺るがし、国民の行政への信頼を失わせる由々しき問題と言わざるを得なくなりました。

 

なぜなら情報公開請求により明らかになった文書がニセモノで、行政に都合のいいように改ざんされているようなものであれば、そもそも情報公開制度など全く意味をなさなくなってしまうわけです。

 

ところで、現時点での報道内容には不明な点も多々あります。例えば「書き換え」。これは具体的には何を指しているのでしょうか。考えるに ①正式な決済後文書の提示を国会が求めたのに対して、都合よく書き換えたものを財務省が提出した。②保存されている決裁文書そのものを決済後に差し替え公文書として保管していた。③起案段階の文書が決裁途中で大幅変更され、決裁の取り直しもなされていない等が考えられますが、私が現時点で想像するのは①です。

 

官庁の中の官庁ともいわれる財務省が決裁文書を書き換え(実質改ざん)したことが明らかになった今回の事件。その本質は何でしょうか。

 

私は、「政官関係が歪んでおかしくなっている」ことであると捉えています。歪んだ政官関係が国有地払い下げを通じて(森友学園問題)を通じて表出したということではないでしょうか。

 

振り返ってみれば、ここ20年以上、我が国では政治主導ということが言われ続けてきました。そして、それに向けての制度改革が行われてきました。

 

選挙制度改革(小選挙区制の導入)により、特に選挙に関して派閥の力は弱まり公認権を持つ党の執行部へと権限が集中し、一方で政策の決定や執行に関しては中央省庁再編や内閣機能の強化という機構や制度の変更により党から官邸へとパワーシフトが起きました。そして、こうした制度改革の果実を存分に生かした最初の「強い首相」こそが小泉純一郎でした。

 

確かに選挙で選ばれた政治家が大きな方向性を示し、官僚を使いこなして政策実現をするという「政治主導」は理念として間違っていないと思います。また、選挙の顔となる党首が求心力を発揮し安定的に政権を担うことは、政権がコロコロ変わることよりよほど望ましいことであるとは思います。

 

しかし、今の政治状況を見ると、国会においては与党への批判勢力は極めて弱く、政権党に対抗できる野党は存在しません。また、今回のような事態を受けて仮に政権が総辞職をしたとしても、今の野党勢力に政権を担ってほしいと思う人もほとんどいないのではないでしょうか。そして、近年は政権与党に対しても官邸の方が相当大きな力を有している状況にあります。さらに2014年以降、官邸が内閣人事局を通じ「政治主導の官僚人事」を行うことで官僚へのコントロールを強めています。このように政権は安定しているのに政官関係の歪みは大きくなっているような気がしてなりません。なぜでしょうか?

 

官僚の世界では、最後まで出世レースから外れないこと、いかに良いポストに就くかということが最大の関心事となっています。こうした現実のなかで官僚が時の長期政権に嫌われてしまえば、出世の道は途絶えてしまう。さらに、身近で官邸による「信賞必罰」(かつての自民党による報道機関への圧力などもその例)を目にすれば、「触らぬ神に祟りなし」と「先回りした忖度」が幅を利かすということになるのは当然の流れではないでしょうか。

 

このように、政治主導を振りかざし、制度を悪用した政治が官僚の萎縮と政治への過度の気遣いを引き起こしているとすれば、政治主導を指向した1990年代後半からの取組みも皮肉なものと思えてきます。

 

では、今の制度がおかしいのかということになりますが、私は、そうではなく、運用、もっと言えば、政治の振る舞いや政権の心持ちにこそ問題があるのではないかと思います。

官僚が委縮し、変な忖度をすることなく、その能力を存分に発揮できるような政官関係を築く、そのための政治の振る舞い、政権の振る舞いこそが、今求められているのではないでしょうか。

 

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