宮城大蔵 『「海洋国家」日本の戦後史』 (ちくま新書)
以前買って本棚にあったのを手にとってみた。結果、面白く一挙に読めて、目から鱗の再認識も。
第二次大戦時、遅れて登場してきた帝国主義国日本は、永らく欧米列強に植民化されてきたアジアに進出。一時的に西欧諸国は駆逐されたが、日本の敗戦により、植民勢力の空白が生じたアジアでは独立に向けた奔流がほとばしる。
1955年、4月開催されたバンドン会議は「新しいアジア・アフリカよ、生まれ出よ!」というスカルノ インドネシア大統領の宣言で開幕した。ここに招待された日本は「反共最大の大物」として振る舞うべきか、「アジア復帰の絶好の好機」として会議に参加すべきなのか。
歴史の舞台裏はスリリングであり、そこに後世の政治学者がスポットを当てる。
世界的に進行する米ソ冷戦。その後の中ソ対立。そうした中、経済復興を遂げつつある日本は再度「南進」する。敗戦による挫折と戦時のアジアへの後ろめたさから、国際政治舞台での活動に制約を抱える日本はどのようにアジアに関わっていったのか。
アジア諸国の欲求が脱植民地化から開発へと移るなか、戦後日本は「経済指向と非政治化」という方針でこの地域に臨んだ。著者は、国際政治の舞台で存在感が無く自国経済利益オンリーという、これまでのネガティブなものから、開発によるアジアの豊かさ実現という流れを支えるという「政治」パワーを発揮したと、日本の役割を積極的に評価している。そして、海洋国家日本の進むべき道を指し示す。
戦後、アジアで起こってきた出来事、特に「海洋アジアの要」インドネシアとの関係を中心に、国際政治と日本の国内政治状況が良く理解でき、しかも記述の仕方が物語り調で飽きない。
新書という気軽に読める体裁ながら、日米英豪などの解禁された機密外交文書に基づく調査が裏付けとなっており、国際政治の舞台での日本の足取りが確認できる良書。
戦後アジア史を知る入門書としても、これからの中国やアメリカとの関係を考える上でも、参考となる。
☆ 4つ
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